本の話・20回目

11月の課題図書はこちら。 

PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う

PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う

  • 作者:笹尾 和宏
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

この本はタイトルもいいけど、サブタイトルもいい。

「チェアリング」とか「流しのこたつ」とか、そういう活動に名前がつけられるのがおもしろい。小道具をまちのなかに持ち込んでいるだけなのに、そこに「まちを使う」という現象がしっかりと見えている。

コミュニティだとかの話になると、「環境を整える」みたいに人間の周辺のことを変えていく発想になりがちだけれども、人間自身がまちの認識を変えていく視点を身に着けていくことでも、十分おもしろいことができるのだなぁと思える。

そのための方法とか道具が並べられていて、とても刺激がある。

 

PUBLIC HACKが根づくには、何よりもまず「私的に自由に使ってもいいんだ」という余地を感じられることが大切です。それには、管理者が利用者を見守り、支える視点が重要となるわけですが、公民連携が導入され、民間事業者が行政に対する然るべき責任意識のもとで管理運営を行っている場所では、市民が気軽に関わりにくい雰囲気になってしまいます。(p.143)

「人を集める」「モノを買わせる」といった集客・購買を促す活動に対して、「私的に自由に使ってもらう」というのは、使わせたい側(管理者)が何か手を打って実現できるものではなく、環境・条件を整えて見守り支えるものです。(p.144)

 

「何かその場所のためにできることがある」と実感した時、そこが自分の場所になるのです。(p.173)

コミュニティの問題なんかを語ろうとすると、「関わる」とか「自分ごと」とか「自分たちごと」とか、いろんな言い方がされるようになるけれど、「自分の場所」というところを目指そうとするならば、「(自分が)できること」という視点は重要になる。

パブリックという言葉はなんだか重々しく感じられるような文脈でつかわれることも多いのだけれど(自分の身体も含まれながらも自分の意思ではどうにもならない感じ)、「自分ができること」という気軽さでもってまちを眺められたら、それはとても楽しい。

 

バンクシーのメッセージもいい。

It's always easier to get forgiveness than permission.(p.98)

いい。

 

既存の制度の問題点を指摘しているところだとか、それでもそれを塗り替えていこうという姿勢だとか、日常の暮らしはそこまで大きく変えられなくても、毎日眺めている同じ景色が少しだけ違ってくる予感がある。まちとの関わり方や自由さを知ることで、ずいぶん生きやすく暮らしやすくなるんじゃないかと思った。

 

この本を読んでみて、とりあえず「クランピング」の材料を買いに行こうと思っている。

ただ単に「まちにいる」ことがもっと気軽になるように。